お子さんの話を聴いているお母さん自身は、誰かに聴いてもらえているでしょうか。
ラジオ第35回で、山本栄が「たまごの力」と題してお話ししています。同じ回から、子どもに呼ばれたときのお話も書いています。
娘が覚えていたのは、卵焼きでした
いつだったか、娘たちに訊いてみたことがあります。お母さんのご飯の思い出は、何?
返ってきた答えは、毎日のお弁当に入っていた卵焼きでした。
レパートリーは、かなりあったつもりでいたのです。それが卵焼きかぁ、と思いました。けれど考えてみれば、私も母の卵焼きが大好きでした。
のちに娘から、こう言われました。
一つの卵から、命が誕生するんだよ
脱帽でした。毎日くりかえしていた、何でもないことのほうが、残るのだと思います。
ある講演会で
五年ほど前のことです。ある講演会に行きました。
お話が終わり、質疑応答で、二人のお子さんを抱えた若いお母様が、今のご自分の悩みを相談されました。講師の方の答えは、「私には経験がないから」というものでした。
私はええっと思いましたが、その場はそれで流れました。
見ると、膝に生まれて数ヶ月の赤ちゃんを抱いて、後ろには二歳くらいのお子さんが片時も離れずにいました。お疲れの様子が、ありありと感じ取れました。
肩を落とし、会が終わってもそこを離れようとしない。思い切って、声をかけてみました。
大丈夫?
黙って膝の上の赤ちゃんを抱きしめ返し、後ろにいた子を呼び寄せていました。こみ上げてくるものは、まさに、満たされていないお母様の思いでした。大粒の涙が、それを教えてくれました。
少しずつお話を聴きながら、一つの方法をお伝えしました。
心配そうにお母様の顔を覗き込む小さなお子さんは、お母様を映しているかのようでした。
やがてお母様に笑顔が見られるようになると、片時も離れられなかったお子さんは、お友達の輪の中にそーっと入っていきました。
お母さんの「ねえ」は、どこへ行くでしょう
お子さんが「ねえ、お母さん」と言ってきたら、何を置いても「なあに」と答えてほしい——そうお伝えしています。
けれど、それがいちばんよく分かっておられるのは、お母さんご自身です。
「ねえ」と言ったその時に聴いてもらえると、気持ちが満たされる。ご主人に、あるいは周りの方に。それを知っているからこそ、お子さんにしてあげたいと思われるのだと思います。
では、お母さんご自身の「ねえ」は、どこへ行くのでしょう。
あの日のお母様は、ただ聴いてもらえただけで、笑顔が戻りました。そして笑顔が戻ったとたん、お子さんのほうが離れていったのです。
お子さんのためにできることの中に、お母さんご自身が聴いてもらうことが入っています。
この回で話していること
- 娘が覚えていたのは、毎日のお弁当の卵焼きだったこと
- 講演会で出会った、疲れ切ったお母様のこと
- お母さん自身が聴いてもらえると、お子さんにも伝わること
- 放送では、ニュージーランドに伝わる詩も紹介しています。何もできなかったと思う一日が、読み直される詩です
[ この回を聴く・読む ] https://listen.style/p/loop/zbd0bqf5
FM八ヶ岳「メンタルヘルスケア・心と身体の健康をあなたに」第35回(2022年11月26日放送) ※ 文字起こしでも読めます。
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